Audio Research SP-3 修理レストア依頼機 S.T 様 概要
★漸くレストア完了しました。 2020. 3. 2
とうとうこちらのレストア期間は2か月を越しました。
大変な作業でした。
まず問題のボリュームの回路は大変複雑で、前回他で交換された方もかなり難儀だったと思います。
今回はこちらで正規のボリュームと、これは特殊なバランスボリュームが本来使われていますが、現在はどこにも同じものが無く
結局回路を少し変えて通常のバランスボリュームに交換しました。
前回レストアされた方は回路が良く解らなかったと推測します。
ボリューム、バランスが何とかなって音出しをしましたが、やはりラインの音がキンキンして
フォノイコも歪があります。
この為かなりのコンデンサーや抵抗を交換しました。
電源回路も、特に大変難儀で、どうしてこんな回路にしたか疑問の所が多々あります。
通常の常識で回路を読んでも理解できないしコスト高で無意味なことがたくさんあります。
このSP-3の回路図は4種類あります。恐らく製品で出した後何回も修正されたようです。
本機は3番目の回路図が正解でした。特に電源回路がどれも大幅に違っています。
ラインの回路をレストアしていると、いろいろトラブルも発生しました。
その都度オシロで解析しながらの部品交換となります。
このトラブルの元は電源回路からくるもので設計上は各電圧のバランスから成り立っています。
やはり経年劣化でこのバランスが崩れ、しかも今回のレストアで新品部品が混ざるためもっとバランスが崩れることになり
新品部品が飛んだりしました。
この為、結局まだ使える部品を元に戻し漸く辛うじてバランスが保てる状態です。
★Audio Research SP-3 真空管式プリアンプです。 当工房では初めてです。
ボリュームの調子がおかしいので他のショップに修理に出されましたが、接点やRCAジャックの清掃のみでまともに直して貰えないので当工房に修理を依頼されました。
2019. 12. 23 掲載
2020. 3. 2 レストア完了
レストア後の内部です。
かなりいろんな部品を交換しました。
★エージング風景です。
しっとりと落ち着いた音になりました。
特にクラシックではバイオリンの音が煌びやかに響き、低音も豊かです。
今回カップリングコンデンサーをフランス製のsolen fastに交換してみました。以前からこちらのarantz7で音を聴いてなかなか良い音でしたので今回特に音に重要なところに付けています。
やはり全体にしっとり感がありバンブルビーの様に音の抜けも極めて良く感じます。
本機はかなり複雑な回路ですが、やはりこれだけ凝った回路は音にも反映しています。
いつも聴くMarantz7やmcIntosh C-8とは少し趣の違った音です。
この深みはなかなか出せないかも知れません。
交換部品です。
リヤパネルの接続風景です。
左端が交換したバランスボリュームで右端がメインボリュームです。
ラインアンプです。こちらも最初全てのカップリングコンデンサーを交換しましたが、一部飛んで別の物に交換しました。また、左上の黄色のコンデンサーも良品確認後やはり元に戻しています。
フォノイコの回路です。ほぼすべてのカップリングコンデンサーを交換しました。
電下回路の電解ブロックコンデンサーを最初4本とも全て交換しましたが、バランスが崩れたのでまだ使えるものを選んで1本戻しました。右の少し茶色のものです。
こちらが問題のバランスボリュームです。音の良いコスモス製に交換しました。
こちらもコスモス製に交換したメインボリュームです。
まずはこれ等のボリュームの配線を全て外し、回路をチェックして配線をやり直します。
パッと見で何だか怪しい配線です。
きれいな外観です。
オーナー様から頂いたメモ書きからボリュームの症状を下記に記してみます。
1、ステレオなのに左チャンネルの音のみが左右スピーカー出る。
2、バランスのツマミを右に回して行くと音が左右とも出なくなる。 (本来なら右チャンネルの音になる筈)
3、バランスのツマミを左に回して行くと左チャンネルだけの音になる。 (当然ですが)
4、モードのツマミをステレオにすると左チャンネルのみが左右から出る。
5、モードのツマミをmonoにすると左チャンネルだけの音が左右から出る。
6、モードのツマミをRIGHTにすると初めて右のチャンネルの音が出る。
(この事から右チャンネルの音が存在することがわかる)
確認のため各ボリュームの抵抗値を測ってみました。回り込みの合成で63.7kΩです。
メインボリュームもバランスボリュームも表示では100kΩに換えられています。
これは選定ミスです。
プリアンプのメインボリュームは250kΩ~500kΩでバランスボリュームも500kΩ~1MΩです。
ここまで上げておかなければ回路信号の回り込みが発生します。
恐らく前回のレストアでボリューム交換の時、手持ちに有ったものを間に合わせで代用されたのでは無いでしょうか?
今回電解ブロックコンデンサーのリークから、このボリュームの少ない抵抗値で信号がアースに回り込み変な音の出方をし始めたようです。
音の症状を考えれば納得できます。
只今AudioResearch社から出しているOwnersManual (英文)の回路図を入手したのでボリュームを確認すると、やはりメインボリュームが250kΩ、バランスボリュームは500kΩです。
この為ボリューム類は正規の仕様に交換し、各電解ブロックコンデンサーのリークしているもの3本も交換です。
その他、たくさんの整流ダイオードがありますが一通りチェックし、不良があれば交換します。
カップリングコンデンサーや抵抗類も不良があれば交換です。
暫く回路図を眺めてみると、なかなか凝った回路なのでレストア後にどんな音が出るか楽しみです。
低圧2段目です。こちらもリークしています。
低圧1段目です。こちらもリークしています。
A&Bの100kΩ 2連のメインボリュームです。
高圧2段目です。概ね良いようです。
高圧1段目です。ご覧のようにLeaky表示でリークしています。
★まずは電源投入前のいつものように電解ブロックコンデンサーのチェックからです。
中はやはり年代物の雰囲気が出ています。
症状を伺い、内部を見てみるとすでにメインボリュームがA&B、バランスをCTS製に交換されています。
恐らくこの時配線を違えているのではないかと想像します。もし完全にこれ等のボリュームが不良であれば交換できます。
カップリングコンデンサーはかなり交換されています。